天文館HITTOBEから発信する、東京にはない価値と可能性

2022年4月11日(月)。グランドオープンを翌日に控えたこの日、HITTOBE powered by The Companyの開業レセプションが行われました。

HITTOBEの構想や施設紹介、また関係者によるパネルディスカッションにメディア関係者が多数集まり、HITTOBEの注目度の高さを伺わせました。パネルディスカッションの様子を中心に、当日の模様をご紹介します。

この日はHITTOBEの企画にあたった株式会社鹿児島銀行 取締役頭取 松山澄寛氏による挨拶からスタート。その後、施設の構想説明、ハード・ソフト両面からの施設紹介が行われました。

「地域活性、価値創造を通してHITTOBEが鹿児島の中心になれば」と語る松山氏。
HITTOBEのコワーキングスペースでは、鹿児島にゆかりのあるYORSHIROTTENとRiichirou Shinozaki、二人の作家による作品をたのしむことができる。写真はRiichirou Shinozakiとその作品。
午前のパート終了後、利用希望者への内覧会が行われた。

午後のプログラムは、天文館からサウナ文化を発信しているホテルニューニシノ代表取締役 西野友季子氏とPBOOKMARK松本氏によるトークセッションからスタート。「天文館エリアを盛り上げる方法」をテーマにトークが繰り広げられました。

曾祖母が創業したホテルを引き継いだ西野氏。
「サウナは裸になって自分を見つめ直しリセットできる場所。HITTOBEから歩いてすぐなので、仕事の合間にふらっと来ていただければ、その後の仕事が捗りますよ」

その後はこの日のメインパートであるパネルディスカッションへ。HITTOBEを共同で運営する4社から以下の方々が登壇されました。

●登壇者

・株式会社鹿児島銀行 地域支援部部長 小笹 康浩氏

〈株式会社鹿児島銀行:HITTOBE企画発起。プロジェクトの企画・場の提供を行う〉

・株式会社Zero-Ten Park 代表取締役 榎本二郎氏

〈株式会社Zero-Ten Park:HITTOBE企画サポート。企画コンサルティングほかグローバルネットワークを担う〉

・GMOペパボ株式会社 代表取締役 佐藤健太郎氏

〈GMOペパボ株式会社:HITTOBEのDXサポート。入居者へデジタルサービスの提供を行う〉

・株式会社PBOOKMARK 代表取締役 松本一孝氏

〈株式会社PBOOKMARK :HITTOBE店舗運営。事業オーナーであり、カフェとコワーキングエリアの運営を担当〉

東京をめざさないあり方が街を浮き立たせる

ディスカッションのテーマは〈鹿児島を盛り上げていくためには〉。初めに、それぞれが思う鹿児島の特色・強みが語られました。

小笹氏:これは鹿児島に限ったことではないですが、農産物・畜産等の食が魅力ながら、素材に頼っている部分が大きい。ブランディングがこれからの課題ですね。

榎本氏:今日たまたま訪れた鹿児島のサウナがクオリティが高く驚きました(笑)。鹿児島は歴史・文化があるため他の地方都市に比べて個性が強い。ただ、どの地方都市も東京をめざしてしまいがちなので、あえて『第二外国語を作る』『英語を公用語にする』『鹿児島の若者は東京には上京しない』といった極端な施策があればどこよりもおもしろい都市になるのでは。

多様な人が参加できる環境がチャレンジを生み出す

続いて〈鹿児島の強みを活かすためにHITTOBEができること〉に話題に移ります。

佐藤氏:例えばコワーキングスペースが増えても利用する人々が変わらなければ変化が起こらないですよね。多様な人が参加することで、掛け合わせによって、刺激も生まれて新しいことをやってみようという風土ができる。いろいろな人が参加できて知恵をもらえる環境づくりが大切です。

榎本氏:HITTOBEには鹿児島銀行もGMOペパボも関わっていて、利用する人が何か困ったときに、働きかければ鹿児島のキーマンにつながれると思います。課題を明確にしてオープンに頼ること、例えば「こういうことをやりたい、そのためのチームが欲しい」といった思いを恥ずかしがらずに開示すること。そうすればここから優秀なチームが生まれると思います。

落ちている原石を育てることがローカルの価値につながる

さらに話題は〈ローカルにおける新しい働き方〉に。

佐藤氏:GMOペパボではコロナ渦のかなり早い段階でリモートワークを取り入れ、東京と地方勤務の差がなくなってきています。東京と福岡や鹿児島でチームを組んで仕事をしやすくなりました。ただ、ずっと同じ場所にいると新しい情報が入りにくく、その地方のカラーに偏りやすくなるのかなと感じます。

榎本氏:そうそう、同じ場所に止まっているとリアルな刺激、体感が減ってしまいます。ベースは鹿児島に置きつつ、月一回いろんな場所、いろんな人に会いに行くのが良いのでは。情報はネットから得ることができますが、実行するときに具体的なコネクションが必要な場面もあるので、ここを上手に使ってほしいですね。こういう会社の人と話したいと言ってくれればこちらでセッティングしますよ。

さらに榎本氏の話は続きます。

榎本氏:地方で価値があるのは東京的なものではなく、もっと細かくて、皆が気付かずに落ちているような情報なんです。そこにビジネス的な価値がある。それはどこにあるかも定かではない。でも鹿児島のこれがおもしろいんじゃないか、と自分が気になる原石を磨いていくのが非常に重要だと思います。

小笹氏:それが大事だと気付いている鹿児島の若い経営者が増えていると思います。ここでやれることはないか、なんだろうかと探し続けている人ですね。情報の量が都市に比べて少ないことは言い訳にできないとみんなが気づき始めていて、情報の質をどう見分けるか。これは都会か地方かといった環境によるものではないんだと思います。

松本氏:若い方と話していると、ないものねだりではなく、この場所にあるものをどうするかを常に考えていることに気付かされます。この場所も資源として使い倒して欲しいですね。

小さなつながりからここにしかないモノをつくる

最後に話題は〈HITTOBEの今後の展望〉へ。

佐藤氏:以前とある方同士を引き合わせたらビジネスが生まれて、今日見たら、そこで生まれたソーセージがホテルニューニシノさんで売っていたんです。そういった小さなつながりから生まれるものをもっと増やしたいですね。そういうここならではのものがないと楽しくないし、ここに来る目的が生まれないですものね。

榎本氏:ここから何かひとつでも、僕たちの会社と共にシンガポールなど海外進出できる企業、サービス、お店などがでてきたら嬉しいです。

松本氏:夢がありますね。いきなり海外と考えてしまうとハードルが高いですが、Zero-Ten Parkさんと一緒なら心強い。

小笹氏:HITTOBEは天文館の真ん中に生まれました。今後は奄美や徳之島など広い鹿児島の別の場所にもこういった場所を作れたらなと思います。天文館はエモい街なんだと今日改めて思いました。他にない、この街の価値をここから発信していきたいですね。

パネルディスカッションはここで時間切れとなり、盛大な拍手の中締めくくられました。その後は集まった人々による交流会が開かれ、HITTOBEの熱のこもった一日は瞬く間に過ぎていきました。
写真: bananaworks
取材・文: 小野好美

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